「あなたの信仰があなたを救った」(4)

その1 その2 その3

前回の投稿では、ルカ福音書における「信仰」の概念は、ローマ帝国や旧約聖書における「信仰(あるいは信頼)」の概念とつながるものであることを見ました。イエスに対するクリスチャンの「信仰」は、ローマ皇帝が臣民に対して要求した「信頼(忠誠)」と同様のものとして考えることができます。しかし、イエスに対する「信仰」と、皇帝に対する「信頼」とは異なる側面もあります。今回は、両者の間の連続性ではなくて非連続性の側面について見ていきたいと思います。その再注目するのは、ルカがイエスをどのような種類の「王」として描いているか、ということです。 続きを読む

「あなたの信仰があなたを救った」(2)

その1

前回は、「あなたの信仰があなたを救った」という表現が現れるルカ福音書の4つの箇所(7章50節、8章48節、17章19節、18章42節)について概観しました。これらの4つのエピソードでは、まったく同一のギリシア語の表現hē pistis sou sesōken seが見られるだけでなく、その表現が各エピソードの結末部におけるイエスのことばとして記されていることから、各エピソードの中核的なメッセージを担っていることが分かります。そして、ルカがこの同一の表現を福音書の中で4回も繰り返し用いているのは、ある特定の意図に基づいていると考えることができます。

この4箇所には、共通して見られる次のようなナラティヴのパターンがあります: 続きを読む

「あなたの信仰があなたを救った」(1)

もう一ヶ月以上前のことになってしまいましたが、6月13日(月)に福音主義神学会東部部会の春期研究会で発表をさせていただきました。研究会の全体テーマは「聖書が教える『信仰』(I)」で、その中で私と東部部会理事長の大坂太郎先生(ベテルキリスト教会牧師)の二人が講演をしました。大坂先生は「なぜ『彼』は引き合いに出されたのか?―パウロによる『アブラハムの信仰』再考―」と題して興味深い発題をしてくださいました。当日の二つの講演の要旨はクリスチャン新聞2016年7月3日号に掲載されましたが、このブログではその内容を一般向けに書き直して掲載したいと思います。

私の講演のタイトルは「救いを与える『信仰』~ルカ福音書における『信仰』についての一考察~」で、ルカの福音書、特にその中に特徴的に現れる、「あなたの信仰があなたを救った」(ルカ7章50節ほか)という表現について考察したものです。ですから、これはルカ文書における「信仰」の包括的な研究ではありませんし、ましてや新約聖書全体をカバーしたものではありません。しかし、この特徴的な表現から、ルカが「信仰」ということばで理解していた内容の一端を明らかにすることを願っています。 続きを読む

旧約聖書における「福音」(鎌野直人師講演会)

私が理事長を務める日本福音主義神学会中部部会では、毎年5月に外部から講師をお招きして、公開講演会を行なっています。今年度は鎌野直人先生(関西聖書神学校学監)をお迎えして、「旧約聖書における『福音』とは~イザヤ書から考える~」と題して講演をいただきました。

160516Kamano1 続きを読む