生きているうちにいつかは読みたい本、というものがあります。歳を取るにつれ、自分に与えられた残り時間が短くなるのに反比例して、読みたい書物のリストは長くなるばかりで、全部を読むことはとても無理だと無力感に襲われることがありますが、せめてその中でも優先順位をつけて、自分にとって重要と思える本から読んでいきたいと思っています。
そんな個人的な「人生の必読書リスト」に長い間載っている本の一つに、石牟礼道子さんの『苦海浄土』があります。水俣病を主題にした三部作は、心のどこかでいつも気にかかっており、いつか読みたいと思いつつ、同時にその長大さとテーマのあまりの重さに気後れし、手にとって読むまでには至りませんでした。
それは水俣病そのものに対する私の態度とも通じるものがあるのかもしれません。水俣病についての私の認識は、四大公害病の一つとして学校で習った通り一遍の知識を出るものではありません。今も後遺症に苦しんでいる人々が存在するということは頭では分かっていても、心のどこかでは戦後高度成長期の負の遺産として、過去のものと考えていた部分があったと思います。
要するに、私は水俣病について無知であり、同時にそのことに関して後ろめたさを覚えてもいました。そんな私ですが、先日映画「MINAMATA」を観てきました。
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