クリスマスは「年末行事」ではない

今日はアドベント第一主日でした。たまたま所属教会の礼拝で説教を担当することになりましたので、開口一番「新年あけましておめでとうございます」とあいさつした後、あっけにとられた会衆の方々に、教会暦ではアドベント(待降節)が一年のはじめであることを説明しました。

アドベントと教会暦の始まりについては過去記事に何度か書いています:

アドベント―夜明けを待ち望む

もう一つの座標系

新しい世界のはじまり

キリスト者にとって、アドベントとそれに続くクリスマスが一年の始まりであることを意識することの重要性についてはこれらの記事に書きましたが、この記事では、このことを逆の面から見てみたいと思います。 続きを読む

N・T・ライト著『驚くべき希望』紹介(のようなもの)

近年著書の邦訳ラッシュが続いている英国の聖書学者N・T・ライトですが、このたびまた新しい訳本が出ました。『驚くべき希望:天国、復活、教会の使命を再考する』(中村佐知訳・あめんどう。原題はSurprised by Hope)です。ライトについては、以前『クリスチャンであるとは』の翻訳が出たときに、当ブログでも紹介したことがあります(こちら)。本書『驚くべき希望』の日本語版出版に際して、私も少しばかりお手伝いをさせていただいた関係で、あめんどう様より見本を頂戴しました。感謝します。

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本書は専門的な学術書ではなく、一般向けの書ではありますが、翻訳にして500頁近くになりますので、近寄りがたいと感じる方もおられかもしれません。巻末には山口希生先生による簡潔な解説もついていますので、そちらで全体像を掴んでから読み進めていくと良いかもしれません(こちらでも読むことができます)。このブログでは、本書の内容を細かく紹介していくというよりは、この本をきっかけにいろいろと考えたことを書き綴っていきたいと思います。

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明けの明星を見上げて(『百万人の福音』特集記事)

『百万人の福音』誌より依頼を受けて、4月号の終末に関する特集用に原稿を書きましたので、同誌の許可を得てここに掲載します。クリスチャンだけでなく、キリスト教に関心のある一般の読者も対象にした雑誌ということで、なるべく分かりやすい記述にするよう心がけたつもりです。ちなみに同特集では、「終末期を知る書籍」の一つとして、私翻訳したヴォーン・ロバーツ著『神の大いなる物語』も紹介されています。

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明けの明星を見上げて~聖書に学ぶ、終わりの時代の歩み方

「世の終わり」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか? 世界を襲う天変地異、戦争や飢餓、疫病、そして人類滅亡・・・SF映画に出て来るような、おどろおどろしいイメージを思い描く人が多いのではないかと思います。同時に、そのような話はふだんの暮らしとはかけ離れた、現実離れしたことのように感じている人も多いかもしれません。

聖書は世の終わりについて何と言っているのでしょうか? それはいつ、どのようにしてやって来るのでしょうか? 続きを読む

聖書のグランドナラティヴ再考(2)

前回の記事では、聖書のグランドナラティヴを次のような7部構成で考えることを提案しました:

A 創造
 B 悪の起源
  C 神の民(イスラエル)
   X イエス・キリスト
  C’ 神の民の刷新(教会)
 B’ 悪の滅び
A’ 創造の刷新

さて、この7部構成が従来の6部構成(1.創造、2.堕落、3.イスラエル、4.イエス、5.教会、6.新創造)と違う点は、6番目の要素(集中構造で言うB’)として「悪の滅び」を追加したことです。「悪の滅び」とは、キリストの再臨、最後の審判、そしてすべての悪への最終的勝利を含みます(1コリント15章23-28節、黙示録19-20章など)。もちろん、これらの要素は終末論的成就の一部として、従来のグランドナラティヴ理解にも含まれています。これを独立した一つの要素としたのには、二つの理由があります。 続きを読む

聖書のグランドナラティヴ再考(1)

聖書を真理の命題を集めた百科事典や道徳の教科書のように読むのではなく、一つの首尾一貫した物語として読むというアプローチは、最近日本でも注目されるようになってきました。私もこのテーマについて書かれた、ヴォーン・ロバーツ著『神の大いなる物語(いのちのことば社)を翻訳させていただきました(過去記事)。

旧新約聖書全巻を貫く「大きな物語」はグランドストーリーgrand storyとか、グランドナラティヴgrand narrativeあるいはメタナラティヴmetanarrativeと呼ばれますが、この記事では「グランドナラティヴ」を用いたいと思います。グランドナラティヴとは、聖書の個々の書巻や細かいエピソードを理解するための背景となる、すべてを包括する大きな物語のことです。

物語(ナラティヴ)には、きまったストーリーライン(プロット、筋)があります。ストーリーラインはいくつかのできごとの意味のあるつながりとして捉えることができます。聖書のグランドナラティヴを考える時、聖書全体がどのようなストーリーラインを持っているかを考えることは大切ですが、これまでいろいろな提案がなされてきました。 続きを読む

N.T.ライト『新約聖書と神の民』について(山口希生氏ゲスト投稿 その2)

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山口希生さんによるゲスト投稿の2回目をお送りします。お忙しい中、寄稿してくださった山口さんに心より感謝します。

4月には山口さんを講師として『新約聖書と神の民』出版記念講演会も行われるとのことです(詳細はこちらこちらをご覧ください)。日本でのライトをめぐる議論がさらに活性化する、素晴らしい機会になると思います。

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『新約聖書と神の民』原書
The New Testament and the People of God

第二回

ユダヤ・キリスト教の創造主信仰

ユダヤ教とキリスト教が共有する根源的な信仰とは、この物質世界は善なる神の創られた世界であり、元来は非常に「良い」世界だったという信仰です。創造主である神への信仰ということです。この創造主信仰と対立するのは、物質的世界を劣ったもの、一時的なものと見なすプラトン主義、この世界が劣った神によって創造されたという「グノーシス主義」、さらにはサタンによって創造されたという「カタリ派」などの一群の宗教的思想です。これらの宗教思想は現世を悪い世として悲観的に見て、この世の人生の喜びを否定し、極端な禁欲主義を推奨します。キリスト教においても「この世との分離」が強調される面がありますので、一見するとグノーシス的禁欲主義もキリスト教的だと理解される場合があります。しかし、その根底にある世界観は全く正反対であると言えます。キリスト教が掲げるビジョンとは、この世の消滅ではなく刷新だからです。 続きを読む