創造の神――ジョン・ウォルトン博士来日講演を受けて

前回の更新から間が空いてしまいましたが、ようやく少し時間ができたので、今回のジョン・ウォルトン師の一連の講演その1 その2 その3)を拝聴して考えたことを簡単に書き記しておきたいと思います。

ウォルトン師の講演ではいろいろと興味深い主題が取り上げられていましたが、その中には自分の中でまだ十分に整理し切れていないものや、納得しきれない主張もありました。けれども、少なくとも次の3つの点については、全面的に同意できると思いました。

1.旧約聖書はそれが書かれた古代近東の文化に照らして理解すべきであり、聖書の「字義的」な解釈とは、その文化の中で聖書記者の意図したメッセージを読み取ることである。

2.聖書の記述は科学的知識を教えることを目的としているのではない。したがって現代の科学的知識を聖書テクストに読み込もうとする調和主義(concordism)は避けなければならない。

3.創世記1章の天地創造の記事は物質的な宇宙の起源を説明しているのではなく、すでに存在していた混沌状態に神が秩序と機能を付与し、ご自身が住まわれる聖なる空間とされたこと(宇宙神殿の落成式)について述べている。

この記事では特に最後の点について、さらに考察したいと思います。 続きを読む

ジョン・ウォルトン博士来日講演(3)

その1 その2

来日したジョン・ウォルトン博士の講演会が続いています。本日5月15日(火)の午前は聖契神学校の学生向けにヨブ記についての特別講義が行われ、午後には公開セミナーが行われました。この記事では後者について紹介します。

セミナーのタイトルは「創世記2章は何を語っているのか?~古代の世界観で人類の起源を考える~」というもので、アダムとエバの創造記事についての興味深い講演がなされました。このセミナーの内容は、今回邦訳された『創世記1章の再発見』ではなく、その続編であるThe Lost World of Adam and Eve(邦訳未刊)に基づくものでした。 続きを読む

ジョン・ウォルトン博士来日講演(2)

昨日の投稿に続き、ホィートン大学の旧約学教授であるジョン・ウォルトン博士の来日講演会の内容を紹介します。5月14日(月)は福音主義神学会東部部会の主催で行われた、春期公開研究会での講演「創世記1章は何を語っているのか?~機能的コスモロジーの再発見~」に出席しました。

タイトルを見て分かるように、この講演は12日(土)に行われた講演会と同じ主題について行われました。しかし、神学会での講演ですので、前回よりも専門的な内容に踏み込んで話がなされました。そこで、この記事では、前回と重なる内容は割愛して、前の記事で詳しく触れなかった内容について、ポイントごとに紹介したいと思います。 続きを読む

ジョン・ウォルトン博士来日講演(1)

ホィートン大学の旧約学教授であるジョン・ウォルトン師が来日し、東京を中心として各地で講演会が行われています。そのうちのいくつかについて、概要を紹介していきます。

まず5月12日(土)に、来日に合わせて発売されたウォルトン師の著書『創世記1章の再発見』(いのちのことば社発売)の出版記念講演会が御茶の水で行われました。この講演会では、同書の基本的内容を分かりやすく一般向けに説明されました。 続きを読む

聖書のグランドナラティヴ再考(2)

前回の記事では、聖書のグランドナラティヴを次のような7部構成で考えることを提案しました:

A 創造
 B 悪の起源
  C 神の民(イスラエル)
   X イエス・キリスト
  C’ 神の民の刷新(教会)
 B’ 悪の滅び
A’ 創造の刷新

さて、この7部構成が従来の6部構成(1.創造、2.堕落、3.イスラエル、4.イエス、5.教会、6.新創造)と違う点は、6番目の要素(集中構造で言うB’)として「悪の滅び」を追加したことです。「悪の滅び」とは、キリストの再臨、最後の審判、そしてすべての悪への最終的勝利を含みます(1コリント15章23-28節、黙示録19-20章など)。もちろん、これらの要素は終末論的成就の一部として、従来のグランドナラティヴ理解にも含まれています。これを独立した一つの要素としたのには、二つの理由があります。 続きを読む

聖書のグランドナラティヴ再考(1)

聖書を真理の命題を集めた百科事典や道徳の教科書のように読むのではなく、一つの首尾一貫した物語として読むというアプローチは、最近日本でも注目されるようになってきました。私もこのテーマについて書かれた、ヴォーン・ロバーツ著『神の大いなる物語(いのちのことば社)を翻訳させていただきました(過去記事)。

旧新約聖書全巻を貫く「大きな物語」はグランドストーリーgrand storyとか、グランドナラティヴgrand narrativeあるいはメタナラティヴmetanarrativeと呼ばれますが、この記事では「グランドナラティヴ」を用いたいと思います。グランドナラティヴとは、聖書の個々の書巻や細かいエピソードを理解するための背景となる、すべてを包括する大きな物語のことです。

物語(ナラティヴ)には、きまったストーリーライン(プロット、筋)があります。ストーリーラインはいくつかのできごとの意味のあるつながりとして捉えることができます。聖書のグランドナラティヴを考える時、聖書全体がどのようなストーリーラインを持っているかを考えることは大切ですが、これまでいろいろな提案がなされてきました。 続きを読む

バイオロゴス・カンファレンス・レポート(クリスチャン新聞)

3月末に参加したバイオロゴス・カンファレンスについて、クリスチャン新聞の依頼で執筆したレポートが、5月21日号に掲載されました。同紙の許可を得て、その内容をブログでも掲載します。先に投稿した記事とも部分的に重なりますが、興味のある方はお読みください。

DebHaarsma

バイオロゴスのデボラ・ハースマ代表による講演

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