科学と聖書(5)

その1 その2 その3 その4

使徒行伝には、さまざまな機会に初代教会でなされたスピーチがいくつも収められています。そのうち多くは、まだキリスト教信仰を持たない人々に対して、キリスト教のメッセージを宣べ伝える、いわゆる伝道説教です。これらの説教をじっくりと読んでいくと、それぞれの説教の中で語られている内容には、ある興味深い違いがあることに気づきます。

ペンテコステ(聖霊降臨)の日のペテロの説教(使徒2:14-40)、エルサレム神殿のソロモンの廊におけるペテロの説教(3:12-26)、サンヘドリンにおけるステパノの説教(7:2-53)、コルネリオの家族に対するペテロの説教(10:34-43)、ピシデヤのアンテオケにおけるパウロの説教(13:16-41)、エルサレム神殿の境内におけるパウロの説教(22:1-21)など、使徒行伝の説教の多くでは、イスラエルの歴史(そしてアブラハム、モーセ、ダビデ等、鍵となる人物)について詳しく語られ、十字架につけられて復活したナザレのイエスが旧約聖書が約束していたメシアであると論じられていきます

ところが使徒行伝には、上に挙げたようなパターンとはかなり異なる内容の伝道説教も二つ収められています。

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eラーニング「ルカが語る福音の物語」

 

Grace-onlineにおいてこの秋開講される、ルカ文書のeラーニング・コースを担当させていただく事になりました。

チラシ「eラーニング」とは、インターネットを使った学習システムのことで、世界中どこにいても講義動画やテキストを用いて学びができるだけでなく、掲示板のディスカッションを通して講師や他の受講者と交流することで、さらに理解を深めていくことができるようになっています。詳しくは、こちらをご覧ください。 続きを読む

Equipper Conference 2016

12月27日から31日にかけてJCFNの主催でカリフォルニア州マリエータで行われたEquipper Conference 2016 (EC16)に参加して来ました。

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会場となったMurrieta Hot Springs Christian Conference Center

すでにシリーズ「ルカ文書への招待」(最終回の記事に各回へのリンクがあります)で書いてきたように、今回私は講師の一人としてお招きいただき、朝の4回の「聖書講解」の時間でルカ福音書からお話をさせていただきました。箇所とタイトルは以下の通りです。

第1回 「信じる者になること」(ルカ1章26-38節)
第2回 「弟子になること」(ルカ5章1-11節)
第3回 「隣人になること」(ルカ10章25-37節)
第4回 「証人になること」(ルカ24章44-53節)

参加者は毎朝の聖書講解の前に、小グループに分かれてIBS (Inductive Bible Study、帰納的聖書研究)と呼ばれるバイブルスタディを行いましたが、毎朝のIBSの箇所はその日の聖書講解と同じ箇所が取り上げられました(このような形でIBSと聖書講解を連動させたのは今回が初めての試みだったそうです)。このようにして、IBSで個人や小グループで読み、考え、話し合った同じ箇所について、さらに聖書講解で語られるのを聞くことで、聖書の理解がぐっと深まったということを何人もの方々から聞きました。語る側としても、会衆がとてもしっかりとこちらのメッセージを受けとめてくれているという手応えを感じて、安心してお話しすることができました。このような部分も含めて、集会全体が非常に緻密に考えられ、組み立てられていると思い感銘を受けました。 続きを読む

クリスマスのわざ

カリフォルニアでのEquipper Conference 2016での奉仕のためにアメリカに来ていますが、その前にミネソタ州にある妻の実家を訪れ、何年かぶりでアメリカでのクリスマスを過ごしています。

近年は日本でもそうですが、アメリカでもクリスマスは文化の一部になっており、キリスト教とは直接関係ない世俗の祝日として楽しまれています。

同時に、日本とは異なり多くのクリスチャン人口を抱えるアメリカでは、多くの教会でクリスマスが盛大に祝われています。しかし今回は、そのどちらでもない、もう一つのクリスマスを垣間見ることができました。
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ルカ文書への招待(8)

      

8回にわたってEquipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足をお送りしてきましたが、今回がいよいよ最終回になりました。カンファレンスに参加しない人々にとっても、ルカ文書に興味を持っていただけるきっかけとなれば幸いです。

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ルカが語る福音の物語⑧ 「すべての主であるキリスト」

8回にわたって、ルカ文書(ルカの福音書と使徒の働き)について概観してきました。ルカはイエスと教会の物語を、地上における神の救いのご計画の現れとして描いています。そして、そのストーリーは、地中海世界におけるローマの支配という歴史的現実を背景として展開していきます。

「福音」とは、イエス・キリストを通して神の国、すなわち神の王としての支配が地上に訪れつつあることについての「よい知らせ」です。そのメッセージは、個人の心の問題だけに関するものではなく、地上の現実のあらゆる側面に関わってきます。政治もその例外ではありません。現代のような「政教分離」という考え方は聖書時代の人々にはなかったのです。 続きを読む

ルカ文書への招待(7)

     

Equipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足、その7回目はルカの語る「救い」について考えます。

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ルカが語る福音の物語⑦ 「ルカ文書における救い」

ルカ文書の重要な主題の一つは「救い」です。ルカ福音書のクリスマス物語では、ベツレヘムで生まれたイエスが「救い主」と呼ばれています(ルカ2章11節)。神に献げるために幼子イエスが神殿に連れてこられたとき、シメオンはイエスを抱いて言います。

 「主よ。今こそあなたは、あなたのしもべを、 みことばどおり、安らかに去らせてくださいます。私の目があなたの御救いを見たからです。御救いはあなたが 万民の前に備えられたもので、異邦人を照らす啓示の光、 御民イスラエルの光栄です。」(ルカ1章29-32節)

ここで注目すべきなのは、イエスにおいて実現しようとしている神の救いはすべての人のためのものだ、と語られている点です。イエスはイスラエルだけでなく、全人類に救いをもたらすお方です。3章6節でもルカはイザヤ書を引用して「こうして、あらゆる人が、 神の救いを見るようになる。」と述べています。 続きを読む

ルカ文書への招待(6)

    

12月に入り、南カリフォルニアで行われるEquipper Conference 2016も間近に迫ってきました。この集会に向けたルカ文書の入門コラムとその補足を8回シリーズでお送りしていますが、その6回目をお送りします。

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ルカが語る福音の物語⑥ 「教会のルーツを明らかにする物語」

今回は、ルカ文書が書かれた目的について考えてみましょう。ルカ文書は簡単に言うと、イエスから始まる教会の歴史を記した書であると言えます。しかし、なぜルカはテオピロのために教会の歴史を書く必要を覚えたのでしょうか?

以前のコラムでも書いたように、著者のルカも、その読者のテオピロもおそらく異邦人クリスチャンであり、彼らが属していた教会も異邦人クリスチャンが多かったと思われます。どのような個人や共同体にとっても、自分たちが何者であるのかというアイデンティティの問題は重要ですが、異邦人クリスチャンにとって、このことは特に大きな問題だったと思われます。彼らが信じていた唯一の神はイスラエルの聖書が教え、ユダヤ人たちが礼拝している「アブラハム、イサク、ヤコブの神」でした。また彼らが救い主として信じていたイエスもユダヤ人であり、イスラエルのメシヤだったのです。

要するに問題は、なぜユダヤ教に改宗してもいない異邦人がユダヤ人の神を礼拝しなければならないのか?ということでした。異邦人クリスチャンがユダヤ人クリスチャンとともに、イスラエルの神の民とされた、ということにはどういう意味があるのでしょうか?これは21世紀に生きる私たちにとっても切実な問題です。 続きを読む