創造の神――ジョン・ウォルトン博士来日講演を受けて

前回の更新から間が空いてしまいましたが、ようやく少し時間ができたので、今回のジョン・ウォルトン師の一連の講演その1 その2 その3)を拝聴して考えたことを簡単に書き記しておきたいと思います。

ウォルトン師の講演ではいろいろと興味深い主題が取り上げられていましたが、その中には自分の中でまだ十分に整理し切れていないものや、納得しきれない主張もありました。けれども、少なくとも次の3つの点については、全面的に同意できると思いました。

1.旧約聖書はそれが書かれた古代近東の文化に照らして理解すべきであり、聖書の「字義的」な解釈とは、その文化の中で聖書記者の意図したメッセージを読み取ることである。

2.聖書の記述は科学的知識を教えることを目的としているのではない。したがって現代の科学的知識を聖書テクストに読み込もうとする調和主義(concordism)は避けなければならない。

3.創世記1章の天地創造の記事は物質的な宇宙の起源を説明しているのではなく、すでに存在していた混沌状態に神が秩序と機能を付与し、ご自身が住まわれる聖なる空間とされたこと(宇宙神殿の落成式)について述べている。

この記事では特に最後の点について、さらに考察したいと思います。 続きを読む

教会が育てる翻訳聖書(月刊『いのちのことば』)

月刊『いのちのことば』2018年2月号「私はこう読んだ――『聖書 新改訳2017』を手にして」という新連載が始まりましたが、その第1回目の評者として原稿を書かせていただきましたので、許可を得てこちらでも掲載させていただきます。(「新改訳2017 最初の印象」もご覧ください)

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神の救いの全体像(「舟の右側」新年メッセージ)

舟の右側」誌の2018年1月号に新年メッセージの寄稿依頼をいただき、「神の救いの全体像」と題して書かせていただきました。まだ新年には少し早いですが、雑誌自体は25日に発刊になりましたので、記事のさわりだけをご紹介します。

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使徒行伝20章でパウロがエペソ教会の長老たちに語った訣別説教の中で、彼はエペソでの3年間の伝道活動を総括し、「私は神のご計画のすべてを、余すところなくあなたがたに知らせた」と語ります(27節)。 続きを読む

「パウロ中心主義」を超えて

福音主義神学会の全国研究会議における、「信仰のみ」についての発表で提起した問題の一つは、聖書のすべてをパウロ神学のレンズを通して読もうとする傾向についてでした。

「信仰と救い」というテーマが議論されるとき、しばしばパウロ書簡における「信仰義認」をめぐって議論がなされます。パウロによる信仰義認論の解釈、およびパウロ神学におけるその位置づけが聖書学の重要課題の一つであることはいうまでもありません。けれども、その一方で、信仰の問題について、パウロ以外の新約文書、とりわけ大きな割合を占めるナラティヴ(福音書・使徒行伝)による証言が不当に軽視されてきたのではないだろうかと思います。

たとえば福音書において「信仰と救い」という主題が語られるとき、福音書のテクストが語ることにじっくりと耳を傾ける前に、条件反射的に福音書をパウロ的な信仰義認論の枠組みの中で解釈しようとする、ということが往々にしてなされているのではないでしょうか? 続きを読む

福音主義神学会全国研究会議2017

11月6日(月)から8日(水)まで、東京で行われた第15回日本福音主義神学会全国研究会議に参加してきました。今回は「3つの『のみ』の再発見~宗教改革500年によせて~」というテーマで行われました。160人ほどの参加があり、初めてお会いする方も含め、多くの人との交わりも与えられました。3日間にわたって、楽しく有意義な研鑽の時を持たせていただきました。

今回は宗教改革のスローガンである「聖書のみ」「恵みのみ」「信仰のみ」に沿って発題が行われました。最初に内田和彦先生による基調講演と藤原淳賀先生による応答講演があり、その後鎌野直人先生が「聖書のみ」について、稲垣久和先生と河正子先生が「恵みのみ」について講演をなさいました。この他2日目の午後には青木保憲先生、藤本満先生、吉田隆先生によるパネルディスカッションも行われ、開会礼拝と閉会礼拝は大坂太郎先生と正木牧人先生がそれぞれ導いてくださいました。この中で私は最終日の朝に「信仰のみ」について発表をさせていただきました。

(ちなみに3年前に奈良で行われた研究会議では、使徒的聖書解釈について発表をさせていただきましたが、その時の発表の内容に手を入れて投稿したのがこちらのシリーズです。) 続きを読む

「宗教改革500周年」に思う

本日、2017年10月31日は500年目の宗教改革記念日です。1517年のこの日、マルティン・ルターがヴィッテンベルク城教会の扉に「95箇条の提題」を掲示したのが宗教改革の始まりと言われています。

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もちろん、実際の宗教改革はルター個人が始めたものと言うよりは、もっと大きな歴史的流れの中で起きていった運動ですので、正確にこの日に宗教改革が始まったとピンポイントで特定できるようなものではないと思いますが、一つの象徴的なできごとであったことには間違いないでしょう。

ルター作「神はわがやぐら(Ein feste Burg ist unser Gott)」

プロテスタント教会では国内外で宗教改革500周年を記念してさまざまなイベントが行われています。私自身もプロテスタントに属する一キリスト者として、やはり感慨深いものがあります。しかし同時に、プロテスタント教会は、ただ500周年を無邪気に祝うだけではなく、これまで歩んできた道を振り返り、改めるべきところは改め、さらなる改革を進めていかなければいけないのではないかとも思っています。 続きを読む

新改訳2017 最初の印象

先ごろ出版された、新改訳聖書の改訂版「新改訳2017」を入手しました。予約注文の機会を逸してしまいましたので、もう少し後になるかと思っていましたが、ある方のご厚意で手に入れることができました。心から感謝します。

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もちろん、まだ全巻をじっくりと通読したわけではありませんが、特に新約聖書を中心にざっと目を通して受けた印象(厳密な学問的コメントではなく)を記したいと思います。ちなみに、私は今回の改訂事業には一切関わっていませんので、あくまでも一読者としての感想であることをお断りしておきます。 続きを読む