福音主義神学会全国研究会議2017

11月6日(月)から8日(水)まで、東京で行われた第15回日本福音主義神学会全国研究会議に参加してきました。今回は「3つの『のみ』の再発見~宗教改革500年によせて~」というテーマで行われました。160人ほどの参加があり、初めてお会いする方も含め、多くの人との交わりも与えられました。3日間にわたって、楽しく有意義な研鑽の時を持たせていただきました。

今回は宗教改革のスローガンである「聖書のみ」「恵みのみ」「信仰のみ」に沿って発題が行われました。最初に内田和彦先生による基調講演と藤原淳賀先生による応答講演があり、その後鎌野直人先生が「聖書のみ」について、稲垣久和先生と河正子先生が「恵みのみ」について講演をなさいました。この他2日目の午後には青木保憲先生、藤本満先生、吉田隆先生によるパネルディスカッションも行われ、開会礼拝と閉会礼拝は大坂太郎先生と正木牧人先生がそれぞれ導いてくださいました。この中で私は最終日の朝に「信仰のみ」について発表をさせていただきました。

(ちなみに3年前に奈良で行われた研究会議では、使徒的聖書解釈について発表をさせていただきましたが、その時の発表の内容に手を入れて投稿したのがこちらのシリーズです。) 続きを読む

「宗教改革500周年」に思う

本日、2017年10月31日は500年目の宗教改革記念日です。1517年のこの日、マルティン・ルターがヴィッテンベルク城教会の扉に「95箇条の提題」を掲示したのが宗教改革の始まりと言われています。

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もちろん、実際の宗教改革はルター個人が始めたものと言うよりは、もっと大きな歴史的流れの中で起きていった運動ですので、正確にこの日に宗教改革が始まったとピンポイントで特定できるようなものではないと思いますが、一つの象徴的なできごとであったことには間違いないでしょう。

ルター作「神はわがやぐら(Ein feste Burg ist unser Gott)」

プロテスタント教会では国内外で宗教改革500周年を記念してさまざまなイベントが行われています。私自身もプロテスタントに属する一キリスト者として、やはり感慨深いものがあります。しかし同時に、プロテスタント教会は、ただ500周年を無邪気に祝うだけではなく、これまで歩んできた道を振り返り、改めるべきところは改め、さらなる改革を進めていかなければいけないのではないかとも思っています。 続きを読む

新改訳2017 最初の印象

先ごろ出版された、新改訳聖書の改訂版「新改訳2017」を入手しました。予約注文の機会を逸してしまいましたので、もう少し後になるかと思っていましたが、ある方のご厚意で手に入れることができました。心から感謝します。

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もちろん、まだ全巻をじっくりと通読したわけではありませんが、特に新約聖書を中心にざっと目を通して受けた印象(厳密な学問的コメントではなく)を記したいと思います。ちなみに、私は今回の改訂事業には一切関わっていませんので、あくまでも一読者としての感想であることをお断りしておきます。 続きを読む

科学と聖書(5)

その1 その2 その3 その4

使徒行伝には、さまざまな機会に初代教会でなされたスピーチがいくつも収められています。そのうち多くは、まだキリスト教信仰を持たない人々に対して、キリスト教のメッセージを宣べ伝える、いわゆる伝道説教です。これらの説教をじっくりと読んでいくと、それぞれの説教の中で語られている内容には、ある興味深い違いがあることに気づきます。

ペンテコステ(聖霊降臨)の日のペテロの説教(使徒2:14-40)、エルサレム神殿のソロモンの廊におけるペテロの説教(3:12-26)、サンヘドリンにおけるステパノの説教(7:2-53)、コルネリオの家族に対するペテロの説教(10:34-43)、ピシデヤのアンテオケにおけるパウロの説教(13:16-41)、エルサレム神殿の境内におけるパウロの説教(22:1-21)など、使徒行伝の説教の多くでは、イスラエルの歴史(そしてアブラハム、モーセ、ダビデ等、鍵となる人物)について詳しく語られ、十字架につけられて復活したナザレのイエスが旧約聖書が約束していたメシアであると論じられていきます

ところが使徒行伝には、上に挙げたようなパターンとはかなり異なる内容の伝道説教も二つ収められています。

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科学と聖書(3)

その1 その2

今回もずいぶん間が空いてしまいましたが、科学と聖書についてのシリーズを続けたいと思います。

バイオロゴスのウェブサイトには次のようなミッション・ステートメントが掲げられています。

バイオロゴスは、神による創造の進化的理解を提示することによって、教会と世界が科学と聖書的信仰の調和を見出すようにと勧めます。

そして次の中核的なコミットメントを掲げています:

  • 私たちは、歴史的キリスト教信仰を受け入れ、聖書の権威と霊感を支持します。
  • 私たちは神が何十億年にもわたって存在するすべての生命を造られた創造主であることを認め、進化的創造を支持します。
  • 私たちは真理を追求し、自然界と聖書を研究する中でつねに学び続けていきます。
  • 私たちは謙遜を得ようと努力し、異なる意見を持つ人々とも親切な態度で対話することに努めます。
  • 私たちは、科学や教育、ビジネスなどあらゆる領域で卓越することを目標とします。

ここからバイオロゴスについて2つのことが分かります。1.福音主義的なキリスト教信仰を掲げていること、そして2.生物学的進化を神の創造の手段として受け入れる、いわゆる「進化的創造論evolutionary creationism」の立場に立っていることです(バイオロゴスの詳しい信仰基準についてはこちらを参照)。

ある人々にとっては、この二つはまったく両立不可能と思えるかもしれません。けれども、そのような人々も、なぜバイオロゴスのような団体が存在し、多くの人々に支持されているのか、冷静に考えてみる必要があると思います。(バイオロゴスのサイトに登場する神学者や聖書学者の中には、このブログの読者にはおなじみの、N・T・ライト、スコット・マクナイト、ピーター・エンズ、グレッグ・ボイドらがいます。ただしもちろん、彼らが聖書と科学の問題について全く同じ見解をもっているわけではありません)。

どのような議論でもそうですが、進化論の問題を考える際には特に、用語の定義をはっきりとさせておくことが必要不可欠です。キリスト教会で進化論について議論することが大変難しい理由の一つは、「進化論」という言葉にあまりにも多くの含意が込められている現実があるからだと思います。 続きを読む

科学と聖書(2)

その1

第1回の投稿からずいぶん時間が経ってしまいましたが、気長に少しずつ書いていきたいと思います。今回は、クリスチャン新聞に寄稿したバイオロゴス・カンファレンスについてのレポートの補足です。

レポートの中で私は、聖書と科学をめぐるアメリカの現状について、次のように書きました:

創造論においては、世界は今から6千年から1万年ほど前に文字通り6日間で創造されたと主張する「若い地球説」が、福音派クリスチャンの間では強い支持を得ています。ギャラップ社が2014年に行なった調査によると、成年アメリカ人の42%が、「神は人間を現在とほぼ同じ形で過去1万年以内に創造した」と信じています。またこの立場の代表的団体である「アンサーズ・イン・ジェネシス」(ケン・ハム代表)が、ノアの方舟を聖書の記述どおりの寸法で再現したテーマパーク「アーク・エンカウンター」を2016年にオープンし、話題になりました。

ここで私は2014年のギャラップ社の調査結果を引用しましたが、今月22日に最新の調査結果が発表されたことを、バイオロゴスのサイトを通して知りました。 続きを読む