ルカ文書への招待(8)

      

8回にわたってEquipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足をお送りしてきましたが、今回がいよいよ最終回になりました。カンファレンスに参加しない人々にとっても、ルカ文書に興味を持っていただけるきっかけとなれば幸いです。

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ルカが語る福音の物語⑧ 「すべての主であるキリスト」

8回にわたって、ルカ文書(ルカの福音書と使徒の働き)について概観してきました。ルカはイエスと教会の物語を、地上における神の救いのご計画の現れとして描いています。そして、そのストーリーは、地中海世界におけるローマの支配という歴史的現実を背景として展開していきます。

「福音」とは、イエス・キリストを通して神の国、すなわち神の王としての支配が地上に訪れつつあることについての「よい知らせ」です。そのメッセージは、個人の心の問題だけに関するものではなく、地上の現実のあらゆる側面に関わってきます。政治もその例外ではありません。現代のような「政教分離」という考え方は聖書時代の人々にはなかったのです。 続きを読む

ルカ文書への招待(7)

     

Equipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足、その7回目はルカの語る「救い」について考えます。

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ルカが語る福音の物語⑦ 「ルカ文書における救い」

ルカ文書の重要な主題の一つは「救い」です。ルカ福音書のクリスマス物語では、ベツレヘムで生まれたイエスが「救い主」と呼ばれています(ルカ2章11節)。神に献げるために幼子イエスが神殿に連れてこられたとき、シメオンはイエスを抱いて言います。

 「主よ。今こそあなたは、あなたのしもべを、 みことばどおり、安らかに去らせてくださいます。私の目があなたの御救いを見たからです。御救いはあなたが 万民の前に備えられたもので、異邦人を照らす啓示の光、 御民イスラエルの光栄です。」(ルカ1章29-32節)

ここで注目すべきなのは、イエスにおいて実現しようとしている神の救いはすべての人のためのものだ、と語られている点です。イエスはイスラエルだけでなく、全人類に救いをもたらすお方です。3章6節でもルカはイザヤ書を引用して「こうして、あらゆる人が、 神の救いを見るようになる。」と述べています。 続きを読む

ルカ文書への招待(6)

    

12月に入り、南カリフォルニアで行われるEquipper Conference 2016も間近に迫ってきました。この集会に向けたルカ文書の入門コラムとその補足を8回シリーズでお送りしていますが、その6回目をお送りします。

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ルカが語る福音の物語⑥ 「教会のルーツを明らかにする物語」

今回は、ルカ文書が書かれた目的について考えてみましょう。ルカ文書は簡単に言うと、イエスから始まる教会の歴史を記した書であると言えます。しかし、なぜルカはテオピロのために教会の歴史を書く必要を覚えたのでしょうか?

以前のコラムでも書いたように、著者のルカも、その読者のテオピロもおそらく異邦人クリスチャンであり、彼らが属していた教会も異邦人クリスチャンが多かったと思われます。どのような個人や共同体にとっても、自分たちが何者であるのかというアイデンティティの問題は重要ですが、異邦人クリスチャンにとって、このことは特に大きな問題だったと思われます。彼らが信じていた唯一の神はイスラエルの聖書が教え、ユダヤ人たちが礼拝している「アブラハム、イサク、ヤコブの神」でした。また彼らが救い主として信じていたイエスもユダヤ人であり、イスラエルのメシヤだったのです。

要するに問題は、なぜユダヤ教に改宗してもいない異邦人がユダヤ人の神を礼拝しなければならないのか?ということでした。異邦人クリスチャンがユダヤ人クリスチャンとともに、イスラエルの神の民とされた、ということにはどういう意味があるのでしょうか?これは21世紀に生きる私たちにとっても切実な問題です。 続きを読む

ルカ文書への招待(5)

   

Equipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足、第5回は福音の伝統の継承ということについて書きました。

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ルカが語る福音の物語⑤ 「世代を超えて受け継がれるメッセージ」

 今回も前回に引き続き、ルカ文書の序文(ルカ1章1-4節)を見てみましょう。

「私たちの間ですでに確信されている出来事については、初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを、多くの人が記事にまとめて書き上げようと、すでに試みておりますので、私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。それによって、すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかっていただきたいと存じます。」(ルカ1章1-4節)

ここで「初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを」とあるように、著者のルカ自身は自分が書き記そうとしている多くのできごと、特にイエスの地上生涯の目撃証人ではありません。彼は綿密な調査に基づいて福音書を書いているわけですが、地上のイエスに出会ったことはありませんでした。つまり、ルカはイエスから直接教えを受けた第一世代のクリスチャンではなく、第二世代以降のクリスチャンなのです。 続きを読む

ルカ文書への招待(4)

  

Equipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足、第4回は、ルカ文書の序文についてです。

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ルカが語る福音の物語④ 「『みことば』の書」

どのような本であっても、序文というのは、その本を理解するために欠かせないものです。序文には、その本が何について、どのような目的で書かれたのかが記されています。今回は、ルカ文書(ルカの福音書と使徒の働き)の序文を見てみましょう。 続きを読む

ルカ文書への招待(3)

 

Equipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足、第3回は、ルカ文書の著者と読者についてです。

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ルカが語る福音の物語③ 「ルカ文書の著者と読者」

今回は、ルカ文書の著者と読者について考えて見たいと思います。キリスト教会では伝統的に、テオピロに宛てて書かれた二つの新約文書を書いたのは、ルカという人物であったと考えてきました。このルカはどのような人だったのでしょうか? 続きを読む

ルカ文書への招待(2)

前回に引き続き、Equipper Conference 2016に向けたルカ文書の入門コラムとその補足をお送りします。

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ルカが語る福音の物語② 「ルカ福音書と使徒の働きの並行関係」

前回のコラムでは、ルカの福音書と使徒の働きはルカが書いた一つの長い物語(フィクションという意味ではありません)の前編と後編である、と書きました。

ところで、使徒の働きがルカの福音書の続編ということは、ただ単にルカは福音書で描いたできごとの続きを書き綴っていった、という以上の意味があります。ルカの福音書と使徒の働きの間には、もっと密接な対応関係を見ることができるのです。 続きを読む