このたび、米国の学術雑誌Journal of Theological Interpretationが世界的に著名な新約学者Joel Greenの65歳の誕生日を記念して、献呈特集号を出しました。その中で私も共著論文を書くことが許されましたので、紹介します。
今回の献呈号を編集したマイケル・ゴーマン博士は序文の中で、これは21世紀の献呈論文集の形であると語っています。このように雑誌の特別号として献呈論文を集めることの利点の一つとして、各論文が学術データベースのインデックスに確実に登録され、将来的に他の研究者による検索や入手が容易になるからだそうです。
さて、ジョエル・グリーン博士はフラー神学校の新約学教授であり、多数の著書を出版していますが、私は特に彼が書いた大部のルカ福音書注解や、ルカ福音書の神学についての著作など、彼のルカ文書に関連する著作から大きな影響を受けてきましたし、彼が編集主幹を務めたDictionary of Jesus and the Gospels 第2版では2つの項目の改訂にも関わらせていただきました。
今回書いた論文は、ベテル神学校での恩師であるJeannine Brown博士との共著で、“The Parable of the Good Samaritan and the Narrative Portrayal of Samaritans in Luke-Acts”(良きサマリア人のたとえとルカ文書におけるサマリア人のナラティヴ描写)と題されたものです。この論文では、普遍的な倫理を教えていると考えられがちな良きサマリア人のたとえをルカ文書の物語的コンテクストに位置づけ、教会論的な視点から再解釈しようとしたものです。今回の共同執筆のために声をかけてくださったブラウン師には心から感謝しています。
今回の論文は3つの意味で感慨深いものがあります。第一に、新約聖書の中でも特に思い入れのあるルカ文書に関する論文を英語で出版できたこと、第二に、私を聖書学の道に導いてくださった恩師のブラウン師と共同執筆する機会が与えられたこと、そして第三に、世界的に有名な学者たちと共に尊敬するジョエル・グリーン博士の献呈論文集に参加を許されたことです。
また、今回の献呈号の出版記念会がオンラインで開催され、それにも出席することが許されました。会にはグリーン博士本人はもちろん、各論文の執筆者、また博士の教え子たちやご家族まで参加され、和やかな雰囲気の中で博士の人となりも知ることができ、とても印象に残るひとときとなりました。