力の支配に抗して(1)

当ブログではこれまでもシモーヌ・ヴェイユについて何度か取り上げてきました(たとえばこの記事)。

simoneweil

シモーヌ・ヴェイユ(1921年)

私はヴェイユの専門家ではなく、彼女が書いたものをすべて読んでいるわけでもありませんが、暇を見ては少しずつ読んできました。その中で最も好きな作品はと問われれば、躊躇することなく挙げたいのが、「『イリアス』あるいは力の詩篇」です。これまで、冨原眞弓訳(みすず書房『ギリシアの泉』所収)、Mary McCarthyによる英訳(こちらで読むことができます)、そして最近出た今村純子訳(河出文庫『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』所収)といろいろな訳で読んできましたが、読むたびに感動を新たにする珠玉の小品です。

このエッセイは、タイトルからして素晴らしいです。このような、直截的かつ詩的な表題を自分もいつか書いてみたいと思います。そして開口一番、単刀直入に主題が述べられます。

『イリアス』の真の英雄、真の主題、その中枢は、力である。

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