グラント・オズボーン先生の思い出

休日の朝、購読しているブログをチェックしていると、スコット・マクナイトを通してGrant R. Osborne博士の訃報に接し、驚きと悲しみに包まれました。

グラント・オズボーン先生はシカゴ郊外のトリニティ神学校(TEDS)で長年新約学の教授を務められました。私が先生の名前を初めて耳にしたのは、ベテル神学校在学時に、聖書解釈学の授業で先生が書かれたThe Hermeneutical Spiralを薦められたことでした。

その後TEDSに進学した私が初めて受講した博士課程のゼミが、オズボーン先生のヨハネ黙示録のゼミでした。数人しか受講者のいないゼミの内容は非常に濃密で、ついて行くのが大変でしたが、このゼミで黙示録とユダヤ黙示文学に対する興味をかき立てられ、以来黙示録は新約聖書の中でルカ文書と並んで最も思い入れのある書となりました(ちなみにその時のゼミで一緒に学んだDana Harris博士は現在TEDSで教鞭を執っています)。現在所属教会で黙示録の連続講解説教をしていますが、先生が書かれた黙示録の注解書はよく参照します。

その後私はTEDSでルカ文書についての博士論文を書くことになりましたが、その際オズボーン先生は副査を務めてくださいました。先生のゼミで興味を持った中間時代のユダヤ教文書と新約聖書の関係は、博士論文の主要なインスピレーションの一つになりました。カルヴィニストの多いTEDSで数少ないアルミニアンの教師だったのも特徴的でした。卒業後も学会などで何度かお会いしましたが、いつも大きな暖かい笑顔と握手で迎えてくださったのを思い出します。

アバディーン大学で学ばれたオズボーン先生は、アメリカ福音派の中で編集史批評の手法を取り入れた最初期の聖書学者の一人でしたが、そのことは1970年代末から80年代初頭のアメリカ福音主義神学会で大きな論争を巻き起こしました。一部の学者はオズボーン先生のアプローチは福音主義の聖書論には適合しないと激しく攻撃しましたが、保守的な聖書観に立ちながらも、最新の批評学の成果を頭ごなしに否定するのではなく、吟味しつつ良いものを取り入れていこうとする先生の姿勢は、その後の福音派の聖書学に大きな影響を与えたと思います。私自身もそのスピリットに学んでいきたいと願っています。