科学と聖書(2)

その1

第1回の投稿からずいぶん時間が経ってしまいましたが、気長に少しずつ書いていきたいと思います。今回は、クリスチャン新聞に寄稿したバイオロゴス・カンファレンスについてのレポートの補足です。

レポートの中で私は、聖書と科学をめぐるアメリカの現状について、次のように書きました:

創造論においては、世界は今から6千年から1万年ほど前に文字通り6日間で創造されたと主張する「若い地球説」が、福音派クリスチャンの間では強い支持を得ています。ギャラップ社が2014年に行なった調査によると、成年アメリカ人の42%が、「神は人間を現在とほぼ同じ形で過去1万年以内に創造した」と信じています。またこの立場の代表的団体である「アンサーズ・イン・ジェネシス」(ケン・ハム代表)が、ノアの方舟を聖書の記述どおりの寸法で再現したテーマパーク「アーク・エンカウンター」を2016年にオープンし、話題になりました。

ここで私は2014年のギャラップ社の調査結果を引用しましたが、今月22日に最新の調査結果が発表されたことを、バイオロゴスのサイトを通して知りました。

ギャラップ社は長年にわたり、アメリカ合衆国の成人に対して次のような質問を定期的におこなっています:

Q.人間の起源と発達に関する主張として、あなたの見解に最も近いのは次のうちどれですか?

1)人間は何百万年もかけて発達してきたが、神がそのプロセスを導いた。
2)人間は何百万年もかけて発達してきたが、神はそのプロセスに一切関与しなかった。
3)神は人間を現在とおなじ形で創造した。

この3つの選択肢のうち、バイオロゴスのような進化的創造論は1)、無神論的進化論は2)、若い地球の創造論は3)の立場に、それぞれ対応していると考えることができます。(各選択肢には、他のさまざまな見解も含めることができますが)。ギャラップ社は2)の見解を「世俗的進化論」、3)を「厳格な創造論」と言い換えています。1)はその中間と言えるでしょう。

今回の調査では、1)と3)を選んだ回答者の割合はそれぞれ全体の38%、2)は18%という結果が出ました。特筆すべきは、厳格な創造論を支持する人々の割合が1982年に調査を開始して以来最低となり、はじめて単独首位ではなくなったということです。

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Cited from Gallup Website

「神が現在とおなじ形に人間を創造した」という見解の支持者は、2012年の46%をピークに8ポイント減少しました。一方、「神は人間の発達のプロセスを導いた」という2)の見解と、「神は人間の発達に関与しなかった」という3)の見解はそれぞれ4ポイントずつ増加しています。

ここから分かることは、大多数のアメリカ人は神が何らかの形で人類の創造に関わっていると信じているが、その理解には変化が生じてきているということです。神が現在と同じ形で人間を創造したと考える人々は減少してきており、神が進化のプロセスを導いたと考える人々が増えています。この傾向は、私が個人的にバイオロゴス・カンファレンスに参加して肌で感じた雰囲気や、アメリカの著名な福音派の指導者たちの進化に関する発言(ブログや著書など)をここ数年見てきて抱いた印象と呼応しています。アメリカのキリスト教会では、生物学的進化を受け入れながら、神による創造とそれに関連したさまざまな重要な主題(聖書解釈、人間の本質、「神のかたち」など)を考えようとする人々が増えてきているのです。

もちろん、真理は多数決で決められるものではありませんので、今回の調査結果と、それぞれの見解の妥当性とは別に考える必要があります。けれども、今回の調査は、アメリカの教会に重大な変化が生じつつあることを感じさせるものだと思います。すくなくとも、進化と創造の問題についてさまざまな選択肢をオープンに議論できる空気が教会の中に生まれつつあるのではないかという期待を抱かせる結果だと思います。

上で見たような、各見解の支持者の割合の変化を誤解を恐れず単純に図式化して考えると、2012年以降に若い地球説のような創造論を放棄したアメリカ人(全体の8%)の半数は神への信仰を捨て、半数は進化と創造論を調和させる道を選んだということではないかと思います。ということは、それまで抱いてきた信仰理解と進化論の関係について葛藤を覚えている人々が教会に留まるか去ってしまうかは、教会が両者を調和させる選択肢を提供できるかどうかが重要な鍵となるのかもしれません。

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ひるがえって、日本ではどうでしょうか?聖書的な意味での創造を信じている人々は日本では圧倒的な少数派ですので、もちろん今回の結果を日本に直接当てはめることはできません。けれども、日本の特に福音派の教会はアメリカの影響を強く受けている現状を考えると、今回の調査は日本の教会のこれからを考える上で、重要な示唆を与えているように思います。

正確な統計は分かりませんが、日本の福音派諸教会においては今回の調査で言う3)「神は現在とおなじ形で人間を創造した」の見解が多数派を占めていると思われます。それを踏まえて考えると、今回の調査で明らかになったような、アメリカの教会において進化的創造論の支持層が拡大しつつある傾向は、近い将来日本の教会にも見られるようになると思います。社会における進化論の影響力がアメリカよりも大きい日本においては、その変化はさらに劇的なものになるかもしれません。

しかし一番大切なのは、このような問題に関して安心して話し合うことができる場所を教会が提供できるかどうかだと思います。これは私の憶測ですが、日本のクリスチャンの中には、内心では進化的創造論に共感を覚えながら(あるいは「進化論か創造論か」という対決的問題設定に疑問を覚えながら)、周りの目を恐れてその見解を公言することができないでいる人々も多いのではないかと思います。そのような中で、科学と信仰についての自由な対話が福音派の教会においてもさらに拡大していくことを願っています。