世代から世代へ:現代イスラエルのメシアニック賛美

その後、わたしが見ていると、見よ、あらゆる国民、部族、民族、国語のうちから、数えきれないほどの大ぜいの群衆が、白い衣を身にまとい、しゅろの枝を手に持って、御座と小羊との前に立ち、 大声で叫んで言った、「救は、御座にいますわれらの神と小羊からきたる」。(黙示録7章9-10節)

私は、さまざまな言語、スタイルで神を賛美する音楽を聴くのが好きです。世界には実にさまざまな言語、種類の音楽があり、それは神が造られた世界の多様性、神の美の多様性とともに、上の黙示録の箇所にあるような、神が贖われた民の多様性を実感させてくれます。

今回は現代イスラエルのメシアニック・ジュー(ナザレのイエスをメシアと信じるユダヤ人)によるヘブライ語の賛美を紹介します。

イスラエルのメシアニック・コミュニティーでは、1980年代にヘブライ語の賛美歌がさかんに作られたそうです。私も90年代頃に、イスラエル旅行に参加した友人が現地で買ってきたカセットテープ(!)を借りて興味深く聴いた記憶があります。それらの賛美は現在でもたとえばこちらのCDなどで聴くことができますが、今日の耳にはやはり時代を感じさせるアレンジであることは否めません(それはそれで、多様性を楽しむこともできると思いますが)。

ところがある時、たまたまYouTubeでこれらのヘブライ語賛美を現代風にアレンジし直して演奏している動画を見つけて、すっかり魅了されてしまいました。インターネット上でいろいろ調べた結果、その元になったコンサートのライヴDVDとCDがあることが分かり、さっそく両方とも購入しました。アマゾンでは売っていなかったので、イスラエルから直接取り寄せなければなりませんでした。ちなみにこちらからはmp3バージョンを購入することができます。

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このコンサートは2011年の4月におこなわれたものです。このプロジェクトの背景については、こちらのビデオ(英語)で説明されていますが、80年代のメシアニック賛美を聴き、歌いながら育った賛美リーダーが、今の若いイスラエル人がそれらの歌を知らないことを憂えて、今日の人々の心に届くようなスタイルで演奏しようとしたのがきっかけのようです。コンサート動画を見れば分かるように、たいへんコンテンポラリーなスタイルに仕上がっています。

このCD/DVDのタイトルは“Midor Ledor (世代から世代へ)”とつけられています。これはもちろん、1980年代のメシアニック賛美を今日の世代に受け継いでいくという意味ですが、同時にそれより何千年も昔の聖書のことばを今日の世代の人々に届けていくという意味も見出すことができるのではないかと思います。古代イスラエル人が礼拝において朗唱したであろうヘブライ語の詩が、時を越えて今日の神の民にも歌い継がれていると考えると、不思議な感動を覚えます。

なお、このCD/DVDで気に入っているところは、歌詞の中に英語は一切入らず、すべてヘブライ語で歌われている点です。アメリカなどによくあるメシアニックのCDでは、ヘブライ語の中に英語で歌っている部分が混じって興ざめになることが多いのですが、このコンサートはそのようなことがありません。

収録されている歌は、ヘブライ語旧約聖書のテクストに基づいたものが多いですが、ヘブライ語訳の新約聖書から取られたものもあり、メシアニック(クリスチャン)の音楽であることを思い起こさせてくれます。

参考までに、曲目リストと関連する聖書箇所を挙げておきます。

1. Adonai Machasenu(主はわれらの避け所――マタイ1章21節参照)
2. Haruach Vehakala(御霊と花嫁――黙示録22章17節)
3. Kumi Ori(起きよ、光を放て――イザヤ60章1-2節)
4. Koli El Adonai(私は主に向かって声をあげる――詩篇142篇1-2節、103篇1節)
5. Yavo Eleinu(彼はわれらの所に来られる)
6. Hine Ke’einei Avadim(御覧ください、奴隷の目が主人の手に向けられ――詩篇123篇2節)
7. Ke’ayal Ta’arog(鹿が谷川の流れを慕いあえぐように――詩篇42篇1節)
8. Im Ta’amdu Bidvari(もしわたしの教えにとどまるなら――ヨハネ8章31-32節)
9. Tov Lehodot la’Adonai(主をほめたたえるのは良いことです――詩篇92篇1-5節)
10. Hine El Yeshuati(見よ、神は私の救い――イザヤ12章2-3節)
11. Adonai Adoneinu(私たちの主、主よ――詩篇8篇)
12. Ro’im Anu Et Yeshua(私たちはイエスを見る――ヘブル2章9節)
13. Ruach Adonai Alai(主の霊が私の上にある――イザヤ61章1-3節)
14. Ram Venisa haMashiach(メシアは高く挙げられて)

(YouTubeにはこのコンサートの動画が複数アップされていますが、公式版とうたっているものを貼っておきます。)